ノン子36歳(家事手伝い)を観た


鶴見辰吾山下真司の見分けがつかなかった時期がありました。
今にして思えば、根本的に色々と違うのに、どうして見分けがつかなかったのだろう。
ちなみにその前は、渡哲也と渡瀬恒彦の見分けも付きませんでした。これは今でも微妙です。二人並んでいればすぐにわかるのですが、ピンで見てしまうと、「あれ、これはどっちだ?」と、戸惑います。

哲也・恒彦兄弟のことはさておき、泣き虫先生のこともさておき、鶴見辰吾の出ている映画を観ました。
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「ノン子36歳(家事手伝い)」

ケーブルテレビでやっていたのです。(ケーブルテレビは私のようなテレビ人間を確実に駄目にします)
なんつータイトルだ、と思ったのですが、監督が熊切和嘉さんだと知ったので観ました。好きなんです。

東京でタレント活動をするも泣かず飛ばずで、マネージャーと結婚したが離婚、そして実家の神社で家事手伝い。というものの、何もしないで毎日を過ごし、幼なじみのやってるスナックでクダを巻き煙たがられるノン子。
このノン子が、思いつきだけで行動しているような年下の男の子と出会い、恋愛関係になっていく、というようなストーリーです。
エンターテイメント性は乏しく、地味で、とても面白い映画でした。

ノン子と恋愛関係になる青年・マサルを「大人計画」の星野源くんが好演しています。星野源くんて、ドラマ版「アキハバラ@DEEP」で初めて知ったのですが、どちらかといえば今回の役の方が印象的でした。
若さしか無いのに活力が無い、そんなつまらない青年役です。このマサル、祭りで出店を出したいと頼みに来るのですが、仕切り役の津田寛治にあっさり断られるんですね。それで、許可がもらえるまで諦めないと言って、ノン子の実家に居候するんです。
さらに、許可がもらえていないのに、出店で売るためのヒヨコを注文して勝手にノン子の家に届けてもらうわ、津田寛治のことを「ああいう人は義理人情の人ですから」と言い切って、祭り当日になれば許してくれると思い込む。
結局、彼のヒヨコ売りは許されないのですが、この時に「あんた、義理人情の人じゃないのかよ!」と、津田寛治にキレ、殴りかかり、地元の青年団に囲まれてボコボコにされるんです。
キレるまで、マサルはずっと淡々としているんです。感情表現もあまり無いし、ノン子とのセックスも淡々。
それでいて、最後にキレる。マサルには全く同情できず、好きにも嫌いにもならなかったんですけど、あっさり忘れるわけでも無く……残尿感みたいなキャラクターです。星野源くんだから、この残尿感が出せたのでしょうね。


そして鶴見辰吾ですが、彼はノン子の元夫で元マネージャーの宇田川として登場します。
いきなり現れ、復縁を迫る。さらに、タレント復帰のチャンスがあるから、東京で二人でやり直そうともちかけてくるのです。
この映画の中盤の見せ場は、鶴見辰吾と坂井真紀の濡れ場でしょう。古くて狭い和室で、言葉無く粗雑に行われるセックス。痩せていて、女性的な魅力をあまり感じさせない坂井真紀の身体と、丸出しの鶴見辰吾の尻が猥雑です。
ワンカットで撮られたこの濡れ場、鶴見辰吾がとにかく良いんです。愛情を感じない鶴見辰吾のセックスに、彼が演じた宇田川という男の人となりやノン子との関係をはっきりと見ることが出来ます。
終盤にわかるのですが、ノン子のタレント復帰話は嘘で、宇田川の目的は自分の借金を肩代わりさせることでした。しかし、ノン子の幼なじみのスナックのママとあっさりデキてしまい、彼女に頼ることにするのです。

ノン子は、宇田川の話にその気になるのですが、祭りの日、宇田川から全てを打ち明けられます。
さらに、祭りではマサル青年団にボコられ、騒ぎになっている。思わずマサルの手を引いて走り出すノン子。そのまま、二人は電車へ。

ここまでで終わるのもアリなのかもしれません。でも、電車が東京に着く前に、マサルが乗り継ぎ駅で飲み物を買いに行っている間に、ノン子は黙ってUターンする電車に乗って去って行ってしまうのです。
ラストシーンは、道をうろうろしているニワトリ(おそらく、マサルのヒヨコが大きくなったもの)を見つけたノン子が、それを捕まえる、その笑顔です。

と、地味な映画に長々と書いてしまいましたが、大きな事件がほとんど起こらないからこそ、人間そのものを描くことが出来るんじゃないでしょうか。
そういう映画が好きです。


ちなみに、いちばん好きな映画はこれ
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アニメファンにはボロクソに言われたらしいですが、これ、素晴らしいですよ。
主演の村石千春さんは、もう引退しちゃったんでしょうか。だとしたらもったいないです。


そういえば、ノン子36歳の熊切監督も、くりいむれもんの山下監督も、大阪芸大出身の監督さんですね。